大判例

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仙台高等裁判所 昭和28年(う)132号 判決

詐欺罪は欺罔手段を用いて相手方を錯誤に陥らせることを構成要件とすること勿論であるが、欺罔手段の如何はこれを問わないから、苟も他人に金銭の借用を申込むに当り、これが真実の動機や用途を告知すれば相手方においてこれに応じない場合に、その動機や用途につき真実に反する事実を告知して叙上の申込をなし、相手方を錯誤に陥れ、因つて金銭を交付せしめたときは、その行為は人を欺罔して財物を交付せしめたもので、詐欺罪は直ちに成立すべく、返済の意思の有無や財産上の損害の発生の有無の如きは同罪の成否に何等影響のないものである。原判示事実によれば、被告人等は佐藤節子と共謀の上、接客婦節子の雇主たる田中ヒデに対し「節子が井上大作から二万円借金している、われわれは井上からその金の返済方を委任されているから支払つてくれ」と虚構のことを申向け、同女をして真実節子が井上から二万円借用しているものと誤信させ、因つて原判示の如く借用金立替支払名義の下に計金五千五百円の交付を受けたというのであるから、その行為は直ちに詐欺罪を構成し、仮令所論のように節子において自已の稼高からヒデに支払う意思であり、ヒデにおいては節子の稼高から弁済を受けて確実に回収できる見込であつたとしても、ヒデは前記節子の借金が虚偽とわかつておれば右金員の交付をしなかつたものであることが原判決挙示の証拠により明かであるから、所論事情のため詐欺罪の成立を妨げるものではない。

(中略)

所論田中ヒデが本件偽造借用証を見せられる前に金千円を交付したのは、被告人等が原判示の如く虚構のことを申向けたのみでなく、特にヒデが節子本人にこれを確めたとき節子自身が間違なく借りているから支払つてくれるよう述べたので(節子がそう述べたのは被告人等に半ば脅かされていた結果である)、これを信用したためであり、さればこそヒデは所論本件偽造借用証を見せられたときこれを信用したものであることが窺われるのであつて、ヒデが被告人小林から三千円の借用証(証第一号)を取つたのは所論のように節子の稼高から返済を受ける目的であつたとしても、又所論のように接客婦がその鞍替を世話して貰つた世話料を支払うのが通例であるとしても、右は毫も原審認定の支障となるものではない。

(後略)

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